white minds 第一部 ―邂逅到達―

第十章「不信交渉」7

「来ないですね」
 静寂が満ちる森の中、しびれを切らした青葉がそう漏らした。切り株に腰掛けて目を伏せていた梅花は、耳を澄ましながらそっと顔を上げる。
 気怠そうな顔をした青葉の隣では、シリウスが何か考え込むような目をしていた。三人でここに陣取ってからどれくらい経つだろう? ただひたすら待っているせいで長く感じられるのかどうかも、今の梅花には定かではない。さらに上へと視線を向ければ、鬱蒼とした木々の向こうにちらとだけ青空がのぞいた。森をぬければ燦々とした日差しが降り注いでいることだろう。こうして待っているのがもったいないくらいの晴天だ。
「これでレーナが来なかったらどうするんですか?」
 先ほどから気になっていたことを、思い切って梅花は問いかけてみた。リシヤの森にただ三人でいるだけでは、レーナも怪しんで来ないのではないか。そんな気もしてくる。彼女が出掛けようとしてもアースたちが止めるかもしれない。先日の戦いで彼女も負傷しているはずだった。
「そうだな」
 そこでようやくシリウスが声を発する。いくら青葉がぼやいたところで無反応だったのだが、何か思案していたのだろうか。腕組みをしたシリウスはちらと梅花へ視線を寄越した。
「その場合はもう少しお前たちに危険な目に遭ってもらう必要があるな」
 淡々とした口調だったが、その内容は不穏だった。思わず青葉が「げっ」と呻く。梅花は小首を傾げつつ頬へと指先を当てた。
「本気だって、思ってもらえるでしょうか?」
「疑われるのならば、本気と思ってもらうまでやるだけだ」
「……シリウスさんって、目的のためなら結構容赦ないですね。そういうのは嫌いじゃないですが」
 危険な目に遭ってもらうというのは、具体的にどういう行為を想定しているのだろう。尋ねたい気もするが、聞かない方がいい気もした。梅花はともかくとして、おそらく青葉は文句を言い続けることだろう。ならばぎりぎりまでは曖昧にしておくべきだ。
「おい梅花、そんなあっさりとした反応でいいのかよ。何かとんでもないこと言われてないか?」
 案の定、焦った様子で青葉が詰め寄ってくる。しかしここで「やっぱり止めました」と言ったところで、シリウスから離れられるとも思えなかった。そもそもここはリシヤの森だ。一歩間違えれば空間の歪みに巻き込まれる場所。迂闊な行動は慎むべきだろう。
「言われてるけど。でも仕方ないじゃない。それ以外の方法でどうやってレーナを呼び出すの? 今までの行動を思えば、私たちに危険が迫ればやってくるのは間違いないじゃない。他の方法があるならかまわないけど、思いつかないでしょう?」
 レーナはさながら救世主のようだ。魔族と抗戦する時は必ず現れると言ってもいい。彼女がいなければ死んでいただろうと思われる場面は幾度となくあった。神技隊を守るという言葉通り、いつだって彼女たちはやってくる。
「……性格も似るんだな」
 そこでぽつりとシリウスが独りごちた。一瞬何を言われているのかわからず、梅花はぽかんとしてしまった。それから彼の言葉を噛み砕き、言わんとしていることを予測し、閉口する。
「似て、ます、か?」
 梅花は思わず問い返した。ぎこちない尋ね方になった。レーナの笑顔を思う時、あの余裕に溢れた、自信に満ちた言動を思い出す時、自分との相違にどうしても複雑な気分になる。あのようには振る舞えないと眩しい気持ちになった。だから性格も似ているとはどうしても思えない。
「度胸と割り切り方、感情と客観を切り離した思考がよく似ている」
 それなのにシリウスはそう言い切った。躊躇いのない口調だった。そういった部分を抜き出されると、確かに似ているのかもしれないと思えてくるから不思議だ。自分のことは後回しにする癖も同じなのかもしれない。しかしそこまで口にできるほどに、彼はレーナのことを知っているのか。その事実の方が梅花には興味深かった。
「そ、そうですか……」
「ああ。お、噂をすれば来たようだ」
 戸惑った梅花が相槌を打った時、不意にシリウスは振り返った。その気に愉悦の色が混じる。はっとした梅花がそちらへ視線を向けるのと、気が現れるのは同時だった。確かに先ほどまで何もなかったはずの空間に、一瞬白い光が満ちる。そこに確かな気の流れが生まれる。
「お待たせしたようだな」
 ついでレーナの声が辺りに響いた。とんと水たまりでも飛び越えるような足取りで着地した彼女の髪が、ふわりと優雅になびいた。その後ろではアースが大袈裟に嘆息していた。梅花たちのいる切り株から大人の足で十数歩ほどの距離だろうか。静かに広がる草原の上に、二人はたたずんだ。
「――レーナ」
 梅花はそっと立ち上がった。それ以上何と呼びかけてよいのかわからず、開きかけた口を閉じる。すると微笑んだレーナと目が合った。何度も見たあの朗らかで穏やかで、胸の奥がぎゅっと掴まれるような優しい微笑。ひらりと振られた手の動きにあわせて、額に巻いた白い布が揺れる。今の動作を見る限り、左腕は問題なく動くようになったらしい。
「ごきげんよう、オリジナル。また大層なお出迎えで」
「ああ、一応敬意を示しておかないとな」
 梅花が言葉を探すより早く、肩をすくめたシリウスがそう答えた。挑戦的な声音で言い放つ様に、アースがあからさまに顔をしかめる。しかし当のレーナは気分を害した様子もなく「すまないなぁ」と気楽に笑った。破顔しながら頭を傾ける仕草は相変わらずだ。人によっては馬鹿にされているとさえ感じてしまう言動。これがあるから彼女の立場はより複雑になるのだろう。
「それで、用件は何かな?」
 頬に指先を当てたレーナは、シリウスの方へと双眸を向けた。いつも通り余裕を滲ませた気を纏っているのが、何だか奇妙に感じられる。シリウスを前にしても彼女はこうなのか。
「では単刀直入に言おうか」
 一方、どこか冷め、どこか気怠げな目をしたシリウスは、今にもため息を吐きそうな様子でレーナを見返した。そこにあるのは呆れなのか。それとも何か別の感情も含まれているのか。梅花は二人の様子を交互に見ながら息を呑む。――シリウスはどう切り出すつもりなのだろう。
「お前の目的は変わらないのか?」
 続く言葉は、梅花の予想したものとはかけ離れていた。不躾なそれは明らかに文脈を無視しており、普通なら疑問を投げ返すところだろう。梅花には全く意味がわからなかった。けれどもレーナには通じたらしい。彼女は表情を変えることなく首肯する。
「ああ。変わっていたらこんなところにはいない」
 目的とは何なのか? レーナが何をしようとしているのか、まさかシリウスは知っているのか? 疑問が次々と湧き上がってくるが、ここで口を挟むのは憚られた。故に梅花は口をつぐみ、じっと事の成り行きを見守る。それは青葉やアースも同様のようだった。
 すると微笑みを絶やさぬレーナに向かって、さらにシリウスは神妙に尋ねる。
「そうか、なら問おう。お前は私に仇なすつもりがあるのか?」
 それはどことなく曖昧な問いだった。いや、梅花にはそう感じられるだけなのかもしれない。シリウスを見据えるレーナの瞳には、やはり疑問の色がなかった。お互い何かを読み取ろうとするような、密やかなる攻防が繰り広げられている。二人の気は凪いだままで、そこから察知できる感情はほんのわずかだ。
「それはできたら避けたい事態だなぁ。今のわれでは、どう足掻いても敵わないだろ?」
 探るようなやりとりが繰り返されるかと思ったが、レーナはあっさりとそう答えた。彼女から「敵わない」という一言が飛び出してくると、実に不思議な心境になる。それをここで、当人の前で逡巡なく答えるのはある種とんでもなく度胸がいることかもしれない。それともその言動さえ揺さぶりなのか? 裏の裏を考えすぎて混乱してくる。
「ほう、ずいぶん素直に認めるな」
「事実だろ?」
 苦笑するシリウスに微笑むレーナ。実際の実力と二人の態度は反対だ。これが彼女の存在をますます不可思議なものにしている。梅花にはとても真似できない部分だった。
「なるほどな」
 不意に、シリウスの手が伸びてきた。それが自分の腕を掴むのを、梅花はまるで他人事のように見つめた。ぐいと引き寄せられる力に抗うこともできず、彼女は困惑しながら視線を彷徨わせる。一体何が起こっているのか。シリウスの端整な顔がすぐ傍にあるこの状況をどう受け止めてよいのか。当惑してまごついていると、背後で青葉がくぐもった声を漏らすのが聞こえた。ついでアースの舌打ちが響く。レーナは……笑顔のままだ。
「だがもちろん、それはお前がオリジナルたちを傷つけないという条件の下でだ」
 すると表情を変えずにレーナはそう付言した。怒りも嘆きも動揺もない、凛とした声だった。もしそのつもりなら敵わなくとも敵対すると、まさかそう言いたいのか? 梅花の方が動揺しそうだ。あくまでレーナは神技隊を第一と考えているらしい。そこまでする理由がわからないのがもどかしいところだ。
「そうか。私にそのつもりはない。……が、それを信じるかどうかはお前次第だ」
 腕が解放される気配はなく、すぐ傍でシリウスの声が響いた。首を捻って見上げてみても彼の涼しい顔が見えるだけ。そうなだけに、まるで挑発するような、試すような一言が強く耳に残った。
 一体これは何なのだろう。二人は何を確かめようとしているのだろう。互いに互いの距離と姿勢を推し量りながらの問答は、不思議と戯れているようにも聞こえるから奇妙だ。
「そうくるか」
 頬から指を離したレーナが苦笑した途端、シリウスの手が緩んだ。思わぬタイイングで解放された梅花は、体勢を崩しながら一歩後ろへと下がる。そこでようやく呼吸が楽にできるようになり、自分が息を詰めていたことを自覚させられた。思っていたよりも緊張していたらしい。
 肩で大きく息を吐くと、慌てた青葉の手が伸びてくる。支えるよう背を撫でられ、彼女はかろうじて相槌を打った。たったこれだけのことでひどく疲れを覚えた。肩を掴む彼の手に指先を添えながら、彼女はゆっくり顔を上げる。
「お前は私を信じるか?」
 張り詰めた静寂を、シリウスの声が揺らした。それは今までとは打って変わり、優しい響きを伴っていた。彼はおもむろに前へと手を伸ばす。その手のひらが向かう先で、レーナは相変わらず微笑をたたえていた。つと細められた彼女の瞳、持ち上がった口角は、普段以上にどこか妖艶で、そして挑戦的で。お互いに物腰は柔らかなのに纏わり付く空気が重かった。またにわかに緊張が高まり、梅花は息を呑む。
 交渉というからもっと何か取り引きのようなものをするのかと思ったが、そういったやりとりではなかった。まるで一種の儀式だ。彼の問いかけにレーナは何と返事するのか。
「お前の人間に対する態度は信頼しているよ」
 頭を傾けたレーナはさらに笑みを深めた。その後ろにいるアースの目に動揺が滲むのが、梅花からも見て取れた。彼が喫驚するのはわかる。「信頼している」という言葉はそれだけ重い。
「ただし、それはお前に対してだ。お前の後ろには他の神がいるだろう?」
 そこでレーナはひらりと手を振る。他の神と強調する声には言い知れぬ感情が宿っているようだった。シリウスの後ろにいる神とは誰のことなのか。「総意かと言われると悩ましい」と答えた彼の表情を、梅花は思い出す。
「彼らがオリジナルたちを切り捨てるのが心配だ」
 切り捨てるという響きが、梅花の胸に重石を乗せた。それは常日頃どうにか奥に押し込めようとしている考えだった。
 宮殿は、上は、神技隊の力を利用しようとしている。それもこのところは対魔族の戦いにおいて。まだミケルダやラウジングたちが助けてくれるからよいものの、今後の戦いで使い捨ての駒とされる可能性は否定できなかった。たとえ上にそのつもりがなかったとしても、結果的にそうなる確率は低くない。それでもミリカのことを考えるときっと自分たちは上の要請を無視できないだろう。神技隊の多くは失うことに対してひどく敏感だ。
「あれは私にはどうにもならん」
 ぞっとしない想像に顔をしかめていると、シリウスはこともなげにそう言い捨てた。あまりの言い様に梅花は絶句するが、レーナは違ったらしい。表情を変えずに大袈裟に肩をすくめる。
「ずいぶんと人事だなぁ」
「事実を言ったまでだ」
「確かに、責任が増えると頭が固くなるのはよくあることだ。狭い世界だとさらに加速する」
 何故だかわかり合っている二人は、ぽんぽんと言葉を掛け合った。その気安い調子がこの場には不釣り合いで、それをどう捉えたらいいのかわからなくなる。裏に何かを潜ませているのはわかるのに、それが何かまでは掴めない。梅花は置いてけぼりだ。
「同感だな。あの引きこもり体質はいかんともしがたい」
「おいシリウス、少しはなんとかしてくれ。それではこちらも動きようがない」
「最大限の努力はしてやる。が、あいつらの保証はできない。後はどうにかしろ」
「ひどい言い草だなぁ」
 置いていかれているのは梅花だけではない。くつくつと笑うレーナを、アースは信じがたいといった面持ちで見つめていた。彼女の場合は笑いや微笑みがあらゆる意味を持ち得るため、それだけではどういった感情を反映しているのかわからなかった。それでも梅花の目には、少なくとも今は、敵対心というものが感じ取れない。
「では逆に問おう。こんな確認までして、お前はわれをどうしたいんだ?」
 しばらく笑い続けた後、ふいとレーナは瞳を細めた。その顔に浮かぶのは今までとはどこか異なる、悪戯っぽくも妖艶な微笑だった。自分に同じ表情ができるとは思えなくて、梅花は胸元を押さえる。この自信、余裕は、どこから生まれるのだろう。
「相変わらずだな」
 レーナの挑戦的で艶めかしい眼差しを真正面から受け止め、シリウスは口の端を上げた。
「一方的に確認されるだけでは割に合わないだろう?」
「そうか。お前に求めたいものは、おそらくお前が一番苦手としているものだ」
 腕組みしたシリウスの姿は実に悠然としている。レーナと対峙しているのにこうも動じない者というのは、彼が初めてかもしれない。その不敵な横顔を梅花はまじまじと見つめた。レーナが最も苦手としているものなどぱっと思い浮かばなかった。彼女は何でも苦もなさそうにこなしてしまう気がする。彼はそんなことまで知っているのか。
「私の後ろにいるあの疑り深い連中に、信用するに足る証拠を見せて欲しい」
 続くシリウスの言葉に、レーナはさも楽しげに失笑した。その一言で周囲の空気が一変した。この得も言われぬ状況にどう反応してよいのか、梅花は逡巡する。
「なるほど、そういうことか。それは確かに一番苦手なことだな。かなりの難題だ。まあ、努力してみるしかないか」
 唖然とするアースの視線をものともせず、レーナは肩を揺らして笑い続けた。してやられたと言わんげな、それなのに満足そうな気を纏っていた。彼女の言葉を噛み砕いた梅花は、その意味するところを飲み込んで絶句する。それは、つまり、シリウスの提案を呑むということなのか?
「おいレーナ、正気かっ」
 一拍間をおいて我に返ったアースが、慌てたように声を上げる。腕を抱えつつ笑っているレーナの肩を掴むと、彼は無理やり自分の方へと向けた。彼の反応の方が当然だろう。この戯れのようなやりとりの中で二人は一体何を理解し、妥協し、譲歩したというのか。梅花には読み取れなかった。
「あいつは神なんだろう?」
「そうだな」
「つまりかつてのお前を殺した奴の仲間ってことだろう?」
「そうだな」
 アースの眼光が鋭さを増す。「かつての」という意味は不確かだったが、それがリシヤの森でのラウジングとの一戦を指しているのだろうというのはすぐに予測がついた。
「次がないとどうして言い切れるっ」
 激昂とまではいかずとも、叫ぶアースの声はある種の怒りを孕んでいた。無理もないことだと梅花も思う。その一方で予想外にも、シリウスが怪訝そうに片眉を跳ね上げるのが目に入った。どうやらあの件はまだ彼の耳には届いていなかったらしい。その必要もないのか、それどころではない状況だからか。
「アース、落ち着いてくれ。確固たる未来を口にできる者などこの世界には存在しない」
 詰め寄るアースの手を、レーナはそっと優しく引き離した。なお声を上げようとする彼の手を、そのまま彼女は両の手のひらで包み込む。、柔和に瞳を細める様は、先ほどの挑発的な笑顔とは全く別物だった。何とはなしに気恥ずかしさを覚え、梅花は閉口する。彼も声を失っているようだったが、レーナはかまわず説き伏せ続けた。
「だから言い切ることはできない。しかしこの状況で我々を殺すことに全力を費やすのだとしたら、地球の神は大馬鹿としか言いようがない。わかってくれるな?」
 目の前に当の神がいる状況で、レーナはまた思い切ったことを口にする。梅花の鼓動は飛び跳ねたが、それでもシリウスは気分を害した様子もないどころか小さく相槌を打っていた。この状況というのは、あのミスカーテと呼ばれる魔族が来たことを意味しているのか? 確かに彼がまた姿を見せた時のことを考えると、レーナを失うのはまずい気がする。何より彼女とて簡単に殺されたりはしないだろうから、そのために割く戦力のことを考えると頭がよい選択とは言えない。今すぐ害になるものから優先して対応する方が利口だ。彼女が言いたいのはそういうことだろうか。
「それに、オリジナルたちを守るという意味でなら、悪い話ではない」
 頭を傾けたレーナはふわりと破顔した。アースは何か言いたげに口を開きかけたが、うまく言葉を探し出せない様子だった。しばしの後に諦めのため息を吐き、あいている左手で首の後ろを掻く。
「あーもういい。お前が折れないのはわかっている。好きにしろ」
「何かあればすぐに戻ってくるから。それまでこちらは頼む」
 複雑な気持ちになるやりとりだが、ずいぶん見慣れてしまったことも自覚せざるを得なかった。梅花はほっと息を吐く。何故か背後で青葉が舌打ちしたのが聞こえたが、今はあえて無視することにした。
 これでとりあえずシリウスの目的は果たされたことになるのだろうか? これから梅花たちはどうすればいいのだろう? そう疑問に思って視線を向ければ、シリウスも同じくこちらへと一瞥をくれたところだった。
「ああ、ここからは私一人でかまわない」
 何を問いかけたかったのかは伝わったらしく、シリウスは首を縦に振った。話が早いというのは大変ありがたいものだとしみじみと感じる。余計な言葉がいらないというのはこうも負担が少ないのか。
「わかりました」
 この続きはシリウスに任せよう。頷いた梅花はちらと空を見上げた。木々の隙間から見える空は、相変わらず気持ちのよい青だった。

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